概要
妊娠悪阻(にんしんおそ)は、妊娠中の吐き気・嘔吐が強く、食事や水分を普段どおりにとれず、日常生活に大きな支障が出る重い状態です。一般的な「つわり」と同じ意味ではありません。妊娠初期に始まることが多いですが、症状の強さと期間には個人差があります。水分を飲んでも吐く、尿が少ない・色が濃い、強いふらつき、体重減少がある場合は、尿検査の結果を待たずに産婦人科へ早めに連絡してください。
原因
妊娠中の吐き気・嘔吐には胎盤から出るGDF-15というホルモンへの反応や遺伝的な個人差が関わると考えられています。本人の気持ちや努力不足が原因ではありません。以前の妊娠で症状が強かった人や多胎妊娠などでは起こりやすくなります。腹痛、発熱、排尿時の痛みがある、あるいは妊娠16週以降に初めて嘔吐した場合は、感染症など別の原因も調べる必要があります。
治療法
軽い症状では食べられるものを少量ずつ、飲める水分をこまめにとる工夫をします。それでも生活に支障が出る場合は、妊娠中に使える吐き気止めを医師と相談できます。水分がとれない、嘔吐が続く、脱水や体重減少がある場合は、診察で体重・脈拍・血圧、飲食の状況、必要に応じて血液検査を確認し、外来または入院で補液や薬を使います。重い嘔吐や摂取不足が続く場合にはビタミンB1(チアミン)の補充が重要です。尿中ケトン体の有無だけで重症度や入院の必要性は判断しません。症状が改善しないときは我慢せず再相談してください。
つわりと妊娠悪阻は同じではない
吐き気・嘔吐が強く、食べたり飲んだりできず、普段の生活が大きく妨げられる場合に妊娠悪阻を考えます。症状がつらい段階で相談できます。
水分がとれない・尿が減るときは連絡
水分を保てない、尿量が減る・色が濃くなる、ふらつく、体重が減る場合は産婦人科に早めに相談します。
腹痛・発熱・遅い発症は別の原因も確認
腹痛や排尿時の痛み、発熱、妊娠16週以降に初めて始まる嘔吐では、感染など妊娠悪阻以外の原因も調べます。
尿ケトンだけで重症度を決めない
2024年のRCOG指針は尿中ケトン体を脱水や妊娠悪阻の重症度の指標にしないよう勧めています。飲食量、生活への影響、体重、脱水徴候などを総合します。
薬・補液・ビタミンB1も治療の選択肢
少量頻回の食事だけでつらさが続けば妊娠中に使える吐き気止めを相談します。重い場合は補液と電解質の確認を行い、摂取不足が続けばビタミンB1を補います。