概要
スポーツ心臓は、継続的な運動に適応して生じる心臓の変化です。心臓の大きさや壁の厚さ、安静時の脈拍などに変化が見られます。生理的な適応と確認できれば、それ自体は病気ではありません。ただし、心筋症などの病気と区別する必要があり、脈が遅いことや心臓が大きいことだけで正常とは判断できません。
原因
運動で必要な血液を送り出すため、心臓の構造や自律神経の働きなどが適応します。変化の程度は、競技の種類、運動量、年齢などによって異なります。脈の遅さには薬や、運動量に対してエネルギー摂取が不足している状態などが関係する場合もあり、すべてをトレーニングの効果と決めつけないことが大切です。
治療法
生理的な適応と確認され、症状やほかの異常がなければ、通常はスポーツ心臓自体の治療は必要ありません。病気との区別が難しい場合には、追加の検査、個別の運動調整、経過観察を行います。運動量を減らした後も一部の変化が残ることがあるため、変化が消えないことだけで病気とは決められません。運動を続ける条件と再診の必要性を、検査結果に応じて医師と確認します。
運動中の胸痛・失神を、鍛えているからと見過ごさない
強い胸痛、急な呼吸困難、意識がおかしい・反応がない場合は119番です。運動中に失神した、胸の痛みや動悸が出た、以前と違う息切れがある場合も、運動を中止して医療機関へ相談してください。症状が消えたことだけで練習を再開せず、受診時に運動中だったことを伝えましょう。
安静時の脈拍の数字だけでは、正常を判断できない
よく訓練された人では安静時の脈が遅いことがありますが、どの程度なら正常かは症状、心電図、運動への心拍の反応などで判断します。スマートウォッチの値や、脈拍の数字だけを自己診断の基準にしないでください。確認のために激しい運動で脈を上げようとせず、気になる値や症状を医療者へ伝えましょう。
心電図・心エコーを基本に、必要な検査を選ぶ
問診と診察、心電図、必要に応じた心エコーなどで、生理的な変化と心筋症・不整脈などを区別します。症状や所見によって、運動負荷検査、長時間の心電図記録、心臓MRI、血液検査などを追加します。全員がすべての検査や遺伝子検査を受けるわけではありません。検査後は、何が確認でき、何がまだ不明なのかを聞いておきましょう。
競技・症状・薬と、家族の心臓病を伝える
競技の種類、普段の練習量と最近の変化、症状が起きた運動や時刻、服用薬、食事や体調の変化を伝えます。家族の心筋症や若い年齢での突然死も、病気との区別を考えるうえで大切です。過去の健診・心電図の結果や、症状があるときの記録があれば、受診時に持参しましょう。
運動を続ける範囲と、再開の条件を確認する
生理的な適応で症状や疑わしい所見がなければ、脈が遅いことだけで運動が禁止されるわけではありません。一方、症状がある、病気との区別がつかない場合は、競技の強度や継続の可否を個別に決めます。練習・試合に参加できる範囲、追加検査までの過ごし方、どの症状で中止・連絡するかを医師と確認してください。
運動を減らす判断と、経過観察も個別に決める
病気との区別のため、一定期間運動量を減らして再評価することがありますが、自分で診断するために一律の期間休む方法ではありません。運動を減らしても脈の遅さなどが続く人がいます。検査が正常でも疑問が残る場合には、必要な経過観察を相談し、新しい症状や家族歴の情報があれば再診時に伝えましょう。